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目と耳で知った「オートリバース」の世界

目と耳で知った「オートリバース」の世界

 

青春ラジオ小説「オートリバース」が放送されて約3ヶ月。

つい先日、今更ながら原作の「オートリバース」を読了したのでラジオとの相違点に触れながら感想を語りたいなと思いました。

 

放送当時を思い出しながら語りますが、たしか11話分割→Bバージョン→Aバージョン→Cバージョンと聴いていたと思います。

 

最初に聞いたものが11話分割だったので、それをベースに話していきます。

ちなみに小学校の頃は読書感想文がとても苦手でした。

 

 

 

 

以下、「オートリバース(原作含む)」のネタバレを含みます。

 

 

 

 

1話の最初は猪狩蒼弥演じる橋本直が転校先の学校に来たところから始まります。

小説では、学校に入るまでの描写も細かく描かれており、直の性格がよくわかります。

 

なるべく目立たずに生き、人生を諦めたかのような冷静さがあるけれど、独特な視点と「嫌い」という感情を持つ。初めはこの大人しい少年を猪狩さんが?と思いました。

 

教室に入りクラスメイトの前で自己紹介をする時に、同じく転校生の作間龍斗演じる高階良彦が入ってきます。

ラジオではここで高階が「この学校クソみてえなやつしかいねえな」と直に耳打ちします。小説ではこの言葉はなく、驚く直に「なんだよ、本当のこと言って何が悪い」と続けますが、小説ではその前の「親が離婚して苗字が変わったばかりだから慣れていない」という話に対して「本当のこと」と言っています。ラジオという限られた時間の中で、ここで高階の性格がなんとなく掴めます。小説版では直の微妙な家庭環境が描かれますが、ラジオでは初めから離婚したていで進みます。

 

作ちゃんが喧嘩が強い役というもの不思議に感じましたが、いがさくの役のぴったり具合は後々にわかっていきます。

 

 

ラジオでは高階が不良生徒との喧嘩を重ね周りから恐れられていく姿、そんな高階と仲良くなっていく直の姿がコロコロと描かれていますが、小説ではここも細かく描かれます。

学校に居心地の悪さを感じている2人は近くの神社で偶然会い、高階の持っている「ボム!」や直の持っている「カチカチ」などを通じて仲が深まります。

また、高階の目がオニヤンマの目に似ているという話も出てきます。

分割版では高階の「でさ、エメラルドグリーン って何色?」と言う言葉でドラゴンフライが流れます。

 

2話の冒頭は「橋本って高階のパシリなの?」とクラスメイトに聞かれるところから始まります。高階と一緒にいることで守られていた直は、1人になった途端不良たちに目をつけられ、ボコボコにされます。

 

なんやかんやあり、直が高階にカセットボーイを見せ、「オートリバース付きだぜ」と言います。タイトル回収。

「オートリバースってさ、嫌いなんだよ。勝手にひっくり返るから」と言う高階に「なんだよそれ」と返します。

わたしはカセットボーイというものを初めて聞いたし、オートリバースという言葉も初めて知りました。まあカタカナから想像するに自動で反転するという意味なので察しはつきますが。当時大学4年生の私は、初めてこのセリフを聞いたときに「オートリバース って便利じゃん」とチョクが思っているであろうことを考えていました。

 

直をボコボコにした不良と一悶着あった後、直は「俺って高階の何?」と高階に聞きますが、高階からは「なんだよ突然」と返します。「パシリでもいいや」と言った直に、高階は「チョクは俺のダチだ」と言います。

このシーンは、小説とラジオのBバージョンにおいてとても重要なシーンになります。

高階にとっては、チョクは「ダチ」でありどちらが上とか下とかありません。家にも学校にも居場所がない2人は同じなのです。

 

2話の最後、高階は直に「俺好きな女できたから、お前とはもう遊べない」と告げます。ここで小泉今日子の名前が出てきます。

 

 

3話の冒頭は直と高階がNHKホールの収録に行くところから始まりますが、小説ではその前にいかに直が小泉にハマったか、そして直の複雑な家庭についても触れられています。

ラジオでは直は実はそこまで小泉にハマっていなかったのでは?と思えるような感じではありましたが、小説を読めば直がちゃんとオタクなことがわかり安心しました。

 

ここでついに今日子隊、そして田原と出会います。ラジオでは田原は今日子隊に入れてくれ親衛隊について教えてくれた人くらいの描かれ方ですが、小説では田原の人の良さがよくわかります。

小説の田原はいじられ体質の可愛い先輩ポジションでとても可愛いです。

 

親衛隊に入り直と高階は自分たちの居場所を見つけ、「ここは努力が報われる場所だ」という言葉を大切にします。

 

親衛隊が「努力が報われる場所」というのは現代のアイドルファンにも通じるものを感じます。ファンが応援し視聴率や売上枚数など数字として努力した分だけ推しは伸びていきます。もちろん、数字だけではない世界なのはたしかですが、目に見えて数字が結果につながっていく部分はこの頃から同じなのかなと思います。

 

 

4話は直が考えてきたコールを披露するところから始まります。

ここのシーンは原作とラジオで随分異なります。

ラジオではコール披露三谷さんが来て高階がカンパを渡す小銭のまま渡し、公衆電話から盗んだことも包み隠さず伝えます。

しかし小説では、直と高階2人で集めたカンパを銀行でお札に変えてから渡し、どうやって集めたかを聞かれても内緒と答え、高階が「どうしたら幹部になれますか?」と聞きます。その場の気まずさから直がとっさにコールを披露します。

小説では直と2人で集めているから小銭をお札に変えるという頭の良さが見えます。

反対にラジオでは、高階の幹部になりたいという真っ直ぐな思いが伝わってきます。

そしてこのことが功を成し、2人と田原はお茶会にお呼ばれします。

このシーンで初めてヒメが出てきますが、美山加恋ちゃん大好きな私は歓喜です。加恋ちゃんの明るく女の子らしい声が、ヒメのイメージにぴったりです。

 

お茶会のシーンでは、緊張して田原がコーヒーにスジャータ3個入れますが、小説では直が入れています。結果として飲むのはどちらも直ですが

 

小説では、お茶会の後に直の両親が離婚します。それから少しして直の母親は自殺未遂をし、実家のある福岡の病院に入院することとなり、直もしばらくのあいだ福岡で過ごします。

親衛隊の活動も少しお休みします。

 

5話のはじまりは小泉今日子が新宿歌謡祭で卵をぶつけられるシーンから始まります。この事件は実際に起こったことで、中森明菜が咄嗟に小泉今日子をステージ袖に連れて行くところもそのまま描かれています。

小説ではカンパを渡した日、お茶会の前にこのシーンが入ります。

この事件をきっかけに、親衛隊には今まで以上に警備という仕事に力を入れ、何かした人には容赦なく制裁します。

 

この事件が、親衛隊を大きく変えてしまいます。

 

その後、直はカワニシと知り合います。カワニシは「高階隊に入りました」と言います。ラジオでは知らない間に高階隊が出来ていますが、小説では直が福岡にいる間にできたと推測できます。

 

高階隊は武闘派と呼ばれ、直は「親衛隊と暴走族は違うだろ?」と何度も言います。

学校もやめてしまった高階が暴走族の世界へ足を踏み入れてしまうのが怖いのでしょう誰かに「違うよ、高階は親衛隊で力をつけているだけだよ」と言って欲しかったんだと思います。

ラジオではカワニシにも高階にも「親衛隊と暴走族は違うだろ?」と聞き、2人ともに「甘いな」と言われますが、小説を見ていると高階はそんなことを言う人なのかな、と不思議になります。小説を読んでいく中で、私は高階にとって直はとても大きな存在なんだと強く思いました。

 

 

その後小泉今日子の家の前に仔猫が捨てられる事件が起きます。犯人は田原だったのですが、高階にヤキを入れられるところまで描写されています。

高階は、田原に「許してくれ」と懇願されても「田原さん見損なったよ」と容赦なくヤキを入れます

 

6話では高階がどんどん大きくなり、親衛隊の幹部を半殺しにした暴走族を高階隊が反逆しにいきます。

 

小説では、この事件の前に直はカワニシと共に高階隊の副隊長になります。高階隊は千葉の支部を任されることとなり、高階は幹部の1人になります。そんな高階を遠くに感じている直に、高階は「もっと喜べよ、お前は副隊長なんだから」と言います。

高階が田原にヤキ入れしているのを見た直は、「俺たちの隊はさ、ヤキはなしにしない?」と高階に提案し、高階も了承します。ここでも高階にとって直が大事であることがわかります。

ラジオでは直は高階隊ではないし、少しずつ高階と距離が空いていくのが会話の数から読み取れます。

 

高階隊が反逆しにいく一方、行かなかった直はヒメを家まで送るよう頼まれ、直とヒメは電車に乗ります。

「ね、このまま山手線ぐるぐるしない?」というヒメがとにかく可愛い。

小説では、この日の直とヒメが細かく描写され、とにかく微笑ましく可愛いです。

「好きです!って何にも考えずに叫べる相手がいるって凄くいいことじゃない?」というヒメの言葉は、今も昔も変わらないアイドルの存在意義のようなものを感じます。

 

7話は、親衛隊のトップの三谷さんが捕まるところから始まります。臨時の連合長として、高階が連合長代理を務めます。

 

ヒメに呼び出された直は、三谷さんには他にも女がいたという話をされます。そんなヒメに、直は「でもブスだよ、知らないけどブスだよ」と言葉をかけます。

この励まし方が、直なりの精一杯だったんだと思うととても可愛いですし、正解か不正解はわからないけれど、少なくともヒメにとって直を良いなと思う要因の一つになったのかなと思います。私はこの励ました方がとてもとても大好きです。

この後のヒメと直のやり取りで、言葉で明らかにはできないけれど2人が両思いなのかなと察せられるやり取りがあります。

小説では、ヒメが直にキスをし、「イヤ?」と聞くヒメに今度は直からキスをするシーンがあります。その後もカップルのように、2人は何度も唇をくっつけます。このシーンは、後に辻堂の海のシーンに繋がっていきます。

 

藤沢で行われたイベントが中止になり辻堂の海に行くこととなったヒメと直ですが、小説では少し違います。

親衛隊の一部は大阪の暴走族を襲撃しに行き、襲撃に行かない人は藤沢の小さなイベントに行きます。

イベント後に海が近いからと2人でこっそり行くことになります。

この時、小泉今日子の『艶姿ナミダ娘』は2位をとっており、高階たちが過激になっていくのと比例して小泉今日子の人気も上がっていきます。

 

海でヒメは「キスはしないよ」と言います。小説では、これは前に一度キスをしたことによるセリフであることがわかります。

結局キス、するんですけどね。

キスの後、ヒメがグリーンフラッシュの話をします。小説では、直がグリーンフラッシュの話をし、ヒメは「なにそれ知らない」と興味深く聞きます。その後のセリフも、ラジオと小説では直とヒメが逆です。

また2人はキスをして、ヒメは直に「好きだよ」と告げます。直は、「うん」というだけで返事はしません。

小説でのここのやりとりはもっと複雑なのですが、どちらも三谷という存在のせいで両思いでもその先に進んではいけない苦しさが伝わってきます。

お互いは好きになってはいけない人を好きになってしまいました。 

 

話を逸らすように「いま緑に光った」とヒメが言います。曖昧な直に、「今この世界には2人しかいないの。だから2人がそうだって言えばそうなの」と言います。

この時のヒメは、小説でいつしか高階が「オニヤンマだ」と言い、「こんな都会にはもういないよ」と返す直に向かって「最後の一匹かもしんないじゃん」と返した高階にどことなく似ている気がします。

 

小説では、海で舌を入れるキスをする2人が描かれており、ここも後々ジェラートを食べるシーンに繋がるのですが、ラジオ版ではキスもジェラートのシーンもないのが残念です。

 

8話は、カワニシにヒメとのキスを知られるところから始まります。カワニシはこのことを引き合いに、親衛隊を抜けてくれと言ってきます。小説ではまずは高階隊の副隊長をやめてくれと言ってきますが、この時カワニシは「高階さんもチョクさんのことはただの同級生だって言ってるんですけどね」と笑います。

高階がそんなこと言うわけないのに。まわりにチョクは高階のパシリだと言われても、高階はお前はダチだと訂正してくれたのに。直は、「高階がそんなこと言うわけない」と反論しつつも変わってしまった高階に自信をなくします。でも私は絶対に高階はそんなこと言うわけないと思っています。

 

小泉今日子が『迷宮のアンドローラ』で1位を取る前に、小説では直が昔よく高階と遊んだゲーセンに行くシーンと、親衛隊を抜けた田原と話すシーンが入ります。

ここの田原がいい人すぎて好きになりました。高階にヤキを入れられてもまだ、親衛隊や高階を気にかけている田原さん

 

直がヒメに電話するシーンで、カワニシに脅されていることを伝えます。親衛隊を辞めるから大丈夫だと言うラジオ版での直とは反対に、小説では「なんとかする」と言いつつも「ヒメと一緒がいい」と駄々をこねる直の姿が見れます。最後は、「これで終わりにしよう」とヒメに告げられ、2人は離れることとなります。

 

「親衛隊やめるんだって?」と高階が聞かれ、「1位になったから」と直は返します。

ここで高階のやられた記憶のないアザについて触れられますが、高階の病気の伏線ですね。

小説では、ここで直は「好きな女ができた」と高階に告げます。いつしか高階に言われたように。高階には「ヒメか」とすぐ理解され、「やめとけ」と言われます。そして直は「ヤキ入れられんならさ、高階がやってくれよ」と言います。ラジオではこの後に「カワニシから聞いたんだろ?」とヒメのことについて触れられます。

 

私もこの時、直にヤキ入れするなら高階しかいない!!!!!と考えていました。

この後に高階が止まらない鼻血を出し、病院へと運ばれます。

 

カワニシに高階の居場所を聞かれ、「知らない」と嘘をつきます。カワニシは高階が暴走族にビビって隠れていると思い込んでいます。

見舞いに行くと、高階があと半年もたないこと、骨髄性白血病であることを高階の母親から伝えられます。

 

 

9話は、直がお見舞いに「ボム!」を持ってくるところから始まります。仲良くなるきっかけの1つでもあった雑誌です。また、カセットを作ってきたからとカセットボーイごと渡します。小説では、ここでいつかの「オートリバースつきだぜ」「オートリバースってさ、嫌いなんだよ」という会話が入ります。

一度目のこの会話の後に親衛隊に入り2人の関係が悪化していき、二度目のこの会話で2人の関係が少しずつ修復されていくように思えます。

 

病室を出ると、カワニシに会います。高階の入院を知られたようです。直はカワニシに「チョクさん、高階さんが自分のところに帰ってきて嬉しいんでしょ」と言われます。不謹慎ですが、親衛隊から離れて昔のように話せることに嬉しがる直が見れます。

あと半年ということもカワニシは知っており、高階が眠る病室で「あと半年と聞いたけど」と口にします。ここで寝ていたふりをしていた高階は自分の余命を知ってしまいます。

 

小説では、見舞いの際に「病気になってよかったと思ってる」という高階と「高階が病気になってよかったと思ってた」という直の姿が描かれています。病気になり、2人で過ごす時間が増え、昔に戻りつつある関係が見て取れます。ここでの「もう泣かないって約束しただろ」という、直が昔学校の不良にボコボコにされたときの話が出ます。

その頃のことを覚えている高階と、覚えているけれどとぼける直。高階の中でやっぱり直はダチなんだなと思えます。

 

病気と治療がすすむ高階に、「今度、小泉に会いに行かない?」と提案します。『常夏娘』が流れ、直の語りが入ります。この時の「小泉今日子に会えば奇跡が起きる。だって、歩けなかった人がクララみたいに歩いたりするんだから」とは、お茶会で田原が言っていた話です。小泉に会えば高階の病気も良くなると信じて、直は高階を収録に連れて行きます。

 

小説では、収録のあるNHKホールに向かう前にスペイン坂でジェラートを食べます。そこで「ヒメとはやったの?」と高階が聞きます。直は、「やってないけど超エロいキスはした」と話します。

この時は普通の男の子が普通の恋バナをしているように思えます。ただただ微笑ましいです。

 

10話はNHKホールに着いたところから始まります。親衛隊の警備担当に名前を告げ「入れてくれ」と頼むと、拒否されます。昔の人を入れないようにと上の人に言われているようで、直が怒り出すと高階は「駐車場行こう」と諦めて大人しくします。

 

車に乗った小泉今日子が来て、周りにいたファンもみんな騒ぎます。直が必死に叫び、小泉今日子は高階に気付きます。直からは、小泉今日子が「車を止めて」と運転手に言っているように見えます。

著者のインタビューで、駐車場でのシーンは実話だと知りました。著者は「そのことを話す小泉さんの表情が忘れられないです。」と言っていました。この記事を読んでから小説を読んだので、より情景がリアルに浮かび上がってきました。

 

高階の癌は脳にも転移し、意識が戻らないままでした。直は堪らずヒメに電話をかけます。ヒメが電話に出ても黙ったままのチョクに、ヒメは「チョク?」と聞きます。声も出していないのにチョクとわかったヒメは、ずっとチョクからの連絡を待っていたように思えます。

ヒメの口から、三谷と別れたことを告げられますが、直は「うん」しか返しません。そして、ヒメに高階と小泉今日子を会わせたいとお願いします。

この時の直には、ヒメのことを考える余裕もないくらい高階のことを考えているんだなとわかります。

 

その夜、高階は息を引きとります。

無機質に鳴り続ける心電図の音に「高階が死んだのは、その夜だった」という直の言葉が入り、ドラゴンフライが流れます。

高階は最期に小泉今日子と会うことは叶いませんでした。

 

 

11話、タイトルコールの前に、いつかの「オートリバースつきだぜ」という会話が入ります。

 

冷たくなった高階の元に、小泉今日子が訪れます。すっかり忙しくなった小泉今日子は、「ごめんね、間に合わなかったね。」と呟きます。ここからは、小泉今日子と高階の掛け合いになります。高階が親衛隊のことを「楽しかった。みんながひとつになれる場所は他にはないもん」と言います。

どんな思い出であれ親衛隊は高階にとって努力が報われる場所であり、家庭にも学校にも居場所がなかった高階にとって唯一の居場所でありいかに大切であったことがわかります。

カンパのために公衆電話を壊した話も出てきます。そのせいで小泉今日子は警察にいろいろ言われたと言っていますが、どうやらこれも実話のようです。

 

次の歌、『なんてったってアイドル』を特別に高階のために歌います。この曲はこの時代のアイドルに詳しくない私でも良く知っている曲です。

 

歌を聴いた高階は、まだしたいことがたくさんあったのに、と悲しみます。

平安京エイリアンもまたやりたい」「マンゴーのジェラートもう一度食べたい」「チョクにもう一度会いたい」「ああ、ウォークマン借りたまんまだ」

今までの話を辿るように、直としてきたことも振り返ります。

 

 

「高階っ!サンキューッッ!」と、小泉今日子は高階の頬にキスをします。

 

高階のためだけに歌ったライブ、最高のファンサービスです。

 

 

「入学おめでとう!」という賑やかな声が聞こえ、「それからどれくらい経っただろう」という直の声が聞こえます。

小説では、このシーンはまだ大学受験のシーンです。高階は高校を辞めたと直に言ったとき、「チョクはさ、頭いいんだから大学行けよ」と言っていました。その言葉通り、直は大学受験をします。小説では、そこが著者の出身校である早稲田大学であることがわかります。小説では受験の帰り道に当たるシーン、ラジオでは入学のシーンで、直は高階の母親から送られてきた昔貸したウォークマンを聴きます。水色のラベルのカセットテープを入れると、佐野元春の『SOMEDAY』が流れます。

 

テープが止まり、オートリバース機能によってB面が再生されます。直は、「確かになんか嫌だな、オートリバースって」「なんか世の中みたいだ」と高階が言っていた「勝手にひっくりかえるから」という言葉の意味がわかります。

もちろん、高階が同じ意味で「勝手にひっくりかえる」と言っていたかはわかりませんが。

 

突然音楽が止まり、病室の音が聞こえます。間違えて録音ボタンを押したのかと思う直に、高階の言葉が聞こえてきます。

 

最後の言葉は、11話分割とABCバージョンでそれぞれ異なります。

 

 

11話版

「もう泣くなよ、チョク。約束だからな」

「高階、またな」

 

A

「なに、チョク泣いてんの?」

「泣くかよ」

「ならいいけど」

「高階」

「なんだよ?」

「ありがとな、色々と」

「なんだよ」

「またな」

 

B

「俺たち親友だよな?」

「なんだよ突然」

「親友に親友って思われてないと最悪じゃん」

「親友だよ」

 

C

「俺死んじゃったけどさ」

「うん」

「いつでもこうしてまた会えるから、別にいいよな」

「うん」

「寂しくなったら、いつでも思い出せよ」

「お前もな」

 

小説は、11話分割とほぼ同じような終わり方をします。

B版がとても良いというのを聞いて11話版を聞いた後にB版を聞き、直が高階に聞いた「俺って高階の何?」という言葉と繋がっているのがとてもしんどく、初めはB版がとても良いなと思いました。

ですが、小説を読むと直に「泣くな」と言った高階がラジオより多く出てくるため、A版や11話分割の良さに気付きます。

C版は少しファンタジーが強いなという感じがありましたが、とある記事を読んで気持ちが変わりました。

 

その記事の中で、著者は小泉今日子さんに「僕の小説を読んで『彼に会わせてくれてありがとう』って言ってくれました」と話していました。

それがなんだかC版の会話に繋がるような気がして、他のバージョンにはない良さを感じました。

 

数ヶ月経ち、私は社会人になりました。直がオートリバースを世の中みたいと言った意味が、ちゃんと分かった気がします。

どれだけ疲れていても、どれだけ気持ちが乗らなくても、日曜日の次は月曜日です。休日のあとには平日がきて、出勤しなくてはいけません。仕事がすごく嫌なわけではない(なんならまだ研修の段階なので大変でもない)けれど今はその状態がなんとなく嫌です。日曜日、HiHi JetsYouTubeを見て「明日仕事か...」と思う毎週です。

 

ラジオを聞き、小説を読み、色々な記事を読み、少しでも多くオートリバースの世界を感じようとしました。

 インスタライブも見て、撮影風景から「これが等身大のチョクと高階なんだ」と思いました。あの映像の2人は、猪狩さんと作ちゃんではなく紛れもなくチョクと高階です。

NGが出た後にふと猪狩さんに戻って無邪気に笑う姿はめちゃくちゃ可愛いです。

 

著者の方が学生主人公を描くにあたってHiHi Jetsを参考にしたと仰っていましたが、ただただ感謝しかありません。小説を読むと猪狩さんと作ちゃんのビジュで、チョクと高階の姿になって映像として浮かび上がってきます。だらしなくズボンからワイシャツを出した2人が神社で雑誌を読んだり、ゲーセンに行ったり、NHKに向かっている姿は多分妄想の中ではなく事実です。

 

 

小説を読了したところで、母親にこの時代の話を聞いてみました。というよりも「こういう小説を読んで、こういうシーンがあって、」って話をしていく中で母親が「そうだねそんなんだったね」と教えてくれました。調べていく中でわかりきっていたことですが、親衛隊や暴走族は物語の中の話ではなく実際に存在していました。

 

一昔前、ジャニオタの間では〇〇軍団というものが流行っていました。2008年とかでしょうか。

なんとなく親衛隊は、それと同じような感じがします。

 

今も昔も、アイドルという日本の素晴らしい文化は変わりません。それを応援するファンたちの形も、全く同じではないにしろ似通っている部分はたくさんあります。

私がこの時代のアイドルに明るかったらもっとオートリバースの世界を理解し、面白い部分がたくさんあったのかなと思いますが、知らないからこそ面白いと思った部分もたくさんあるのだと思います。

ひとつ間違いなく言える事は、アイドルを、推しを生きがいとし応援する事で居場所を獲得する人は今も昔も変わらずいるということです。

 

 

途中まで書いていて放置していましたが、なんとこの度、約2時間というボリューム満点なオートリバース ディレクターズカット版が公開されるということで急いで書き上げてみました。

文を書くのが苦手ゆえ読みにくいものではありましたが、私のオートリバースへの熱が伝わればいいなと思います。

ディレクターズカット版がどんなものかはわかりませんが、5時から公開とのことなのでとにかく早起きして出勤前にきこうと思います。

こんなにも月曜日が楽しみな日曜日はありません。今なら日曜日の次は、はい、月曜日です。と勝手にひっくり返っても嫌な気はしません。

 

猪狩さんと作ちゃんではなくチョクと高階にまた会えるのが楽しみです。

私が宣伝するまでもありませんが是非みなさん聞いてください。